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インタビュー2013-05-17

韓国で“初恋ブーム”を巻き起こした映画「建築学概論」
イ・ヨンジュ監督に聞いた“恋愛”と“建築”の相関関係

 誰にとっても特別で身に覚えのあるもの。それは初恋。大学生のころに恋に落ちた男女が15年ぶりに再会し、家作りを通してかつての思いがよみがえる。不器用で繊細だった若き日の恋と、夢と現実の折り合いをつけながらも、だからこそ再燃してしまう大人の恋。韓国では口コミやリピーターでじわじわと人気を集め、恋愛映画としては異例の410万人もの動員を記録する大ヒットとなった「建築学概論」。本作品の主人公と同じく、建築士として働いていた経歴のあるイ・ヨンジュ監督に話を聞いた。

“恋愛”と“建築”を組み合わせる発想は、どこから生まれたのですか?

「私は以前、建築士として2つの会社で4年ずつ、計8年間働いていた経験があるのですが、そのときから本作の構想を練っていました。恋愛と建築は異なるようでいて似ていると思います。男女が“恋”をして、次第に関係を深めていって“愛”になる。さらに時がたったら、それは“記憶”となる。対して建築は、建築家と依頼主の信頼関係がなければ成り立ちません。依頼主がどんな家に住みたいのか。どんな風に暮らしたいのか。ひいては、どのように生きていきたいのか…。そういうことまで打ち明け合い理解し合わなければ、建築家と依頼主が互いに満足する家は建てられません。これは自分の経験上から学んだ私の建築論です。かつての恋人同士が再会し、“彼女”の望む家を“彼”がデザインし建築する。いわば恋愛と建築を組み合わせたら、きっといいラブストーリーになるのでは…と思いました」

ということは、オム・テウン演じる主人公スンミンはご自身の投影でしょうか?

「まだ経験の浅い建築士という設定や、母親との関係、そして『いい家を建てるには依頼人のことを知らなければ』という仕事哲学などには、確かに自分自身が知らず知らずのうちに反映されているでしょうね。私の場合、あと1年会社に勤めていたら『~代理』という役職がつくところだったのですが、どうしても映画界への憧れが断ち切れなくて、その前に辞めてしまいました。だから、実際に自分のデザインで家を建築したことはなかったのです。それが心残りでもありました。なので、自分のできなかったことを映画のなかで主人公にやってもらったというわけですね。映画やテレビドラマで建築士という職業は、とてもかっこよく描かれていますよね。お金持ちで、女性にモテて、おしゃれで、しかもイケメンで(笑)。だけど実際はとてもハードな職業で、徹夜も日常茶飯事。そのあたりも経験上リアルに盛り込めたかと思います」

監督も、この作品のように切ない初恋を経験したのですか?

「実体験のうちのいくつかは劇中で再現しています。スンミン(イ・ジェフン)と、彼が恋するソヨン(スジ)が鉄道の線路を歩く場面や、彼女の小さいころの写真を貼ったアルバムを一緒に眺めて『かわいいね』とほめちぎったり…うん、けっこう実体験ですね(笑)」

登場人物たち同様、ソウルや済州島など、舞台となる土地へのまなざしにも愛情が感じられます。

「ソヨンは済州島(チェジュド)出身で、若いころは自分の生まれ育った場所を『田舎』と言って嫌っていました。スンミンもまた、ソウルの下町に住んでいることで大学の先輩から軽く見られる描写があります。目には見えない階級社会というものが、韓国には確かに形成されています。ソウルにしても、漢江(ハンガン)を境にして江南(カンナム)と江北(カンボク)ではかなり格差があり、雰囲気も情緒も違います。そうした、住む場所から生まれる気質やコンプレックス、階級意識というものをすくうように努めました。私のデビュー作は『不信地獄』という集合住宅を舞台にしたホラー映画なのですが、その作品でも本作でも、ジャンルを問わず常に心掛けてきたことは、日常性を大切にすることです。どんなドラマチックな事件や出来事よりも、日常的な話こそが人の心に響くと信じているからです。私たちの誰もが思い当たる、日常的で派手でも華やかでもない、だけど普遍性のある物語。それこそが観客の心を唯一打つことができるのではないか、と心から思います」

 日本映画では是枝裕和監督の作品、特に「歩いても 歩いても」に衝撃を受けるほど感銘を受けたというイ・ヨンジュ監督。初恋の記憶が呼び起こされること必至の「建築学概論」は5月18日より、日本で公開される。(文責:皆川ちか)


映画「建築学概論」
出演:オム・テウン、ハン・ガイン、スジ、イ・ジェフン
監督:イ・ヨンジュ 2012年/韓国/117分
© 2012 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved
5月18日より新宿武蔵野館、シネマート心斎橋ほか全国順次公開
公式サイト *予告編

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